先月、奈良に行く機会を頂いた。
5年前、アフガンの世界遺産バーミヤンを訪れた時、ふと思い出したのは古都・奈良のこと。夕支度の煙たなびく長閑な農村、山肌に刻まれた仏教遺跡の壮大な宇宙観、それは既視感にも似た、どこか懐かしい感覚だった。
6世紀前半、唐の若き僧侶・玄奘が仏教探求の旅に出る。彼は十数年もの歳月をかけ、当時「天竺」「ガンダーラ」と呼ばたインド、パキスタン、アフガニスタンを巡り、最新の思想、膨大な教典、そして仏像を唐へと持ち帰った。その成果が奈良へと伝わり、日本の仏教が発展した。
ロケ終了後、念願の薬師寺を訪れた。夕刻の境内は静謐な空気に包まれ、桜の花が、その日の忙しさを忘れさせてくれた。金堂に納められた日光・月光菩薩は、古代ギリシャとオリエントの融合・ヘレニズムやペルシャ文化の影響を受け、力強く、ため息が出るほどセクシー。これらの国宝は、玄奘の旅がなければ、きっと生まれてはいないだろう。そして圧巻は平山郁夫画伯の「大唐西域壁画」。玄奘の旅を讃え、生涯をかけて描いた、チベット、ヒマラヤ、アフガンの風景。それはかの地のエネルギーに迫る力を放ち、僕はただそこに立ち尽くした。
僕を含め、どんなに信心深くなくとも、我々の精神世界には仏教が深く根ざしている。それはもう理屈ではなく、遺伝子に刻まれた記憶。日本人の心は、シルクロード、そしてアフガニスタンにも繋がっている。そう確信させられた奈良の旅だった。
Photo:
top: from NEUTRAL no.6 P114.-Hazara Boys and Buddha statue which was destroyed in 2001 by Taliban. Bamiyan, Afghanistan 2005.
bottom: villagers passing by a mosque in the dusk. Bamiyan, 2005
